師長の思い ~ 私たち夫婦がこのクリニックを開いたわけ

佐賀県有田町の口石やすひろ整形外科クリニック師長

遠い昔、私は福岡の大学病院で正看として勤務しておりました。何故ナースになったのか?それは、幼い頃に読んだ「ナイチンゲール」の伝記に感動し、私もこのような生き方をしたいと思ったからです。

しかし、実際の医療の現場は私が理想とするものとはかけ離れていたようです。多くの先輩方の医療行為が事務的で心がこもっていないように思えましたし、医師達もどこか傲慢で患者様に対し高圧的な態度に見えました。

「患者様にもっと優しくできないものか」、いつもそう思っておりました。

骨肉腫で四肢を切断された子供を見る度、若かった私は苦しくて泣いてしまうのですが、先輩方に「プロではない」といつも叱られ、私はこの仕事に向いていなかったのかと一人悩んでおりました。

でもある日、街でばったり再会したあるご遺族の方から「あの涙がとても嬉しかった」とお聞きし、なんだか救われたような気がして、あの頃の自分はなんとか自分なりに頑張っていくことができていたようです。

玄関先のお花

しかしながら、運命とは皮肉なもので、主人という尊敬すべき人物との出会いがあり、結婚することができ、私は専業主婦となってしまったのです。

子供にも恵まれ、幸せな日々の中でも時々おそってくる「虚しさ」のようなもの。この正体はいったい何なのか・・・。長い月日を経て、ようやくその正体が何だったのか、今こそ理解したような気がしています。自分の為ではなく人様のお役に立てた時に、人間は幸福を感じることが出来るものだということを。

「社会に少しでも貢献したい!」、愛(Love)と夢(Dream)と幸福(Happiness)をたくさんの人たちに届けたいと思っています。

そして、大切なのは、常に謙虚さと感謝の気持ちを実践することだと実感しております。医療においては、いかに患者様の心や体の痛みに寄り添えるかということが最も大事なことだと考えます。

「医は仁術」と言いますが、「仁」とは他人に対する親愛の情、優しさを表す言葉です。現代においては死語となりつつあるこの言葉を実践する場所を、ずっと追い求めていたのかもしれません。

口石やすひろ整形外科クリニック外観

時は流れ、とうとう私たち夫婦は風光明媚な有田の街に御縁が出来、心の中で温めていた「夢の医院」を実現するために開院致しました。

私はクリニックに時々顔をのぞかせてスタッフ達に文句を言う、いわゆるケムタイ“院長婦人”ではなく、あえて“看護師長”という立場を選び、毎日出勤することに決めました。

“愛するスタッフと共に理想の医院を作っていこう”

“今こそナイチンゲール精神を!!”

医療現場は人の命を守るという神聖な場所です。だからこそ、当院の理念を実践する努力を日々行わなくてはなりません。その精神を日々忘れなければ、おのずと言葉と態度になって患者様に尽くすことが出来るはずです。毎朝全員で誓い合って一日をスタートします。いわゆる“接遇”などというマニュアルが必要なのでしょうか?

口石やすひろ整形外科クリニックのスタッフたち

私は幸運なことに素晴らしいスタッフに恵まれました。私たち夫婦にとってかけがえのない宝物です。

当院は整形外科ですので、救急病院のように一刻を争うような患者さまはお見えになりません。しかし先日、来院されていた患者さまの一人が、院内で急に心臓発作を起こされました。その時は全スタッフがその患者さまを助けるために一丸となってものすごいスピードで対応し幸いその患者さまも無事でした。

その時は師長である私も、医療従事者たるスタッフ一人一人のいざという時の結束力とスピードに、素晴らしいプロ意識を感じて誇りに思いました。

患者さんをおもてなしする師長

私たち夫婦は、日頃からいろんな地域の他院のドクターの方々と交流しております。従って緊急事態はもちろん、当院の患者さまからご病気のこと等で相談を受けた時には的確なアドバイスもできますし、時には他院のドクターをご紹介するなど、地域全体で連携しております。整形外科の領域を超えて患者さまから相談をよく受けるのはこういうつながりがあるからだと感じております。

先の東日本大震災ではスタッフも皆心を痛めました。被災された方々のために自分たちにも何かできないかとスタッフそれぞれが動き、また医院でも義援金を集めることを全員で決めました。当院に来られる多くの患者さまもこれに賛同していただき、暖かい気持ちの輪が生まれたように思えます。

もう年なので疲れることもありますが、なぜか又、私自身も明日行きたくなる楽しくてたまらないクリニック。患者様もスタッフも家族同様に愛しい・・・、私の誇りなのです。

実は私は“お金”の事が不得手で、医院の経営管理は全て信頼のおける税理士法人アップパートナーズさんにお任せして、私は患者様を喜ばせる事に専念させてもらっています。

仕事と家事、あきれるほど忙しい毎日ですが、開業するまでは味わえなかった充実感や幸せを肌で感じることの出来る日々・・・。心から神様に感謝いたしております。

手作りのお弁当

最後に、開業して6年目ですが、あまりの患者様の多さに、もう若くない主人の体が心配です。

最近では、一緒に自宅周辺をウォーキングしたり、主人の健康を維持するため、糖質制限をしたお弁当を毎日手作りしています。食材には、よく患者さまからいただくとれたてのお野菜を入れたりするので、主人にもとても好評です。

患者さんからいただいた野菜

今後の夢は、医師となった息子にお父さんを助けて欲しいという思い、それから奇跡的に15年ぶりに授かった孫のような11才の娘が本人の希望通り小児科医となり、いずれ同じ志を持った人と一緒になって、小児科医院のないこの有田の地に、交代で朝も夜も患者さまをお迎えできるようなクリニックを作りたいという夢を叶え、私達みんなで一人でも多くの病む人の為のお役に立てたらと切に願っております。

有田の小さな医院から温かな人々との愛の輪が広がり、そしていつかはこの世から戦争がなくなり、世界中の人々が幸せになれるよう、平和が訪れるようにと心の底からいつもいつでも祈っているのです。

口石やすひろ整形外科クリニック 師長 口石 真弓



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